スパゲッティ図を理解するためのガイド
プロセス視覚化ツールは、日常業務に隠れている非効率性を見つけ出すのに役立ちます。一連の強力な視覚化ツールの中でも、時間とリソースを浪費する移動パターンを洗い出すことに長けているのがスパゲッティ図です。
このガイドでは、スパゲッティ図の特徴、さまざまな業界での活用例、独自の図を作成するための段階的なアプローチについて解説します。実際の使用例を考察し、ベスト プラクティスを探り、利点と潜在的な制限事項を比較検討します。
物理的なワークフローを合理化する場合でも、情報経路をマッピングする場合でも、スパゲッティ図を使えば、体系的な方法に基づいて、複雑なプロセスを効率的なシステムに変えることができます。
スパゲッティ図とは
スパゲッティ図は、物や情報、人などがプロセスの中でどのように移動するかを追跡する視覚的なツールです。一般的なプロセス フローチャートとは異なり、対象が移動する物理的な経路を具体的にマッピングし、そのルートと距離を示します。
スパゲッティ図という名前の由来はその見た目にあります。1 つのマップにすべての移動経路を描画すると、スパゲッティが絡まっているように見える場合が多いことから、その名が付けられました。それぞれの線は、ワークスペース内の異なる行程を表しています。
このタイプのワークフロー図を使うと、非効率的なレイアウト、不要な移動、無駄な動きを見つけ出すことができます。後戻りや長距離移動が生じている場所を把握してワークスペースを見直すことで、移動の流れをスムーズにし、無駄な時間と労力を減らすことができます。
スパゲッティ図テンプレートは、他の方法では見つけることが難しい問題を視覚化するのに役立ち、ソフトウェア開発、オフィス環境、サービス業務におけるプロセス改善に大きな効果を発揮します。
スパゲッティ図の一般的なユースケース
開発チームでは、ワークフローを効率化する目的でスパゲッティ図をよく使います。一般的なスパゲッティ図の例を以下に示します。
- 複雑なシステムにおける情報経路の追跡
- 部門間でのハンドオフのマッピング
デジタル製品チームは、コード レビュー プロセスやデプロイ プロセスのボトルネックを特定する目的で、プロジェクト マネージャーは、部門間コラボレーションを最適化する目的でスパゲッティ図を利用できます。
コラボレーション ミーティングの際は、オフィス スペースでの物理的な移動を追跡することで、ワークステーションの配置を見直し、やり取りをスムーズにすることができます。また製品マネージャーは、アプリからカスタマー ジャーニーをたどって、ユーザーの不満を招くわかりにくいナビゲーション パターンをピンポイントで特定できます。
スパゲッティ図は、プロジェクト コラボレーション セッションの改善にも非常に有効です。さまざまな関係者の間を情報がどのように流れるかを把握しておく必要がある場合に役立ちます。またブレーンストーミング セッションで利用すれば、アイデアの発展経路を視覚化し、コンセプトが行き詰まったり同じような提案が繰り返されたりしている箇所を明確にできます。
スパゲッティ図の作成方法
スパゲッティ図を作るのは簡単で、手動で行うこともデジタルで行うこともできます。まず、分析対象のプロセスを選び、物理またはデジタルのワークスペース マップをスケッチします。実際の移動経路を観察し、それを文書化しますが、人、物、情報の流れを区別できるように複数の色を使います。この図は紙に手書きで描いても構いませんし、オンライン ホワイトボードを使ってリアルタイム コラボレーションを行うこともできます。
分析対象のプロセスを選ぶ
まず、改善が必要な特定のワークフローを選びます。境界が明確で、始点と終点が定義されているプロセスが理想です。たとえば、コードが開発パイプラインでどのように受け渡されるか、チーム メンバーがスプリント計画でどのように移動するか、製品ローンチ時に情報が部門間でどのように伝わるか、などを分析できます。非効率性がボトルネックや遅延の原因になっているようなプロセスを選ぶようにしましょう。
データを収集する
実際のプロセスを観察して、移動パターンに関する正確な情報を収集します。たとえば、会議中の人の経路を追跡したり、チーム メンバーがツールを切り替える頻度をカウントしたり、グループ間での作業の受け渡しに要した時間を測定したりします。タイムスタンプを使用して、期間と頻度を追跡しましょう。この現実世界のデータが、有意義な分析の土台となり、仮定によって結果が歪められるのを防いでくれます。
スペースの物理的なマップを作成する
プロセスが発生している環境を描きます。オフィス レイアウト、デジタル ワークスペース、バーチャル コラボレーション環境などです。この図には、デスク、ミーティング エリア、サーバー、共有リソースなどの主な要素を含めます。対象がデジタル プロセスである場合は、チーム メンバーが使用する各システム、ツール、プラットフォームを描き込みます。このベースライン マップは、文書化する移動パターンのコンテキストを提供します。
経路をトレースする
続いて、マップ化したスペースに実際の動きを示す線を引きます。さまざまな人、物、情報の流れを区別できるよう、異なる色を使用してください。理想的なルートではなく、実際に使用している経路を描きます。経路が交差したり後戻りした場合でも、すべての移動を含めてください。表現が正確であればあるほど、分析の価値が高まります。プロセスの全行程がわかるよう、一連の移動に印を付けましょう。
分析して改善点を特定する
完成した図を検討して、移動距離が長すぎる、動きが重複している、経路が集中してボトルネックが生じているなどの非効率な点がないかどうか確認します。複雑さや混乱を示す、絡み合った線が密集している部分に目を向けましょう。ワークスペースの配置を見直し、ハンドオフを減らし、不要なステップを排除する余地がないか確認してください。移動パターンを単純化し、もっと直接的な経路にするための改善策を具体的に提案します。
たとえば、物流会社の場合は、注文品のピッキングや梱包の際の倉庫作業員の動きを追跡する目的でスパゲッティ図を使用できます。図を作成した結果、後戻りがたびたび発生していることがわかれば、在庫の配置を最適化することで、不必要な移動を最小限にし、作業効率を高めて出荷処理にかかる時間を減らせます。
スパゲッティ図のメリットとデメリット
スパゲッティ図は貴重なインサイトをもたらしてくれますが、使用前に考慮すべきいくつかの制限事項があります。これらのトレードオフを理解しておくと、どのような場合に使うのが最も効果的かを判断できるようになります。
スパゲッティ図のメリット:
- 従来のプロセス文書では見えない隠れた非効率性を明らかにできる
- どのような無駄があるのか、関係者にすぐにわかるような視覚的な証拠を提供できる
- 変更を実施した後の改善状況を測定するための基準が得られる
- 図の作成前と作成後を比較して改善状況を明確に把握できる
- 視覚化を通じて、チーム メンバーをプロセス改善に直接関与させることができる
- 価値を生み出さないアクティビティを特定、排除して、リーン マネジメント戦略を後押しできる
スパゲッティ図のデメリット:
- 正確なデータ収集とマッピングには、ある程度の時間が必要となる
- プロセスの変化に合わせて定期的に更新する必要があるため、維持管理の負担がある
- 複数の変動要素がある複雑なプロセスを単純化しすぎるおそれがある
- 物理的なプロセスには最適だが、仮想ワークフローを表現するのに苦労する場合がある
- ルーチンが確立されている場合、非効率性を明らかにしようとすると抵抗される可能性がある
スパゲッティ図を使用する際のベスト プラクティス
スパゲッティ図を最大限に活用するには、以下のヒントを参考にしてください。
- 分析するプロセスは一度に 1 つにする。すべてを同時に文書化しようとするのはやめましょう。的を絞ることで、視覚的に乱雑になるのを防ぎ、分析を管理しやすくなります。また、人、物、情報の流れを区別するために、一貫した線種と色を使いましょう。
- 関連する指標を含める。移動経路に加えて、所要時間、移動距離、移動の頻度を記載します。定量的な詳細情報を加えることで、スパゲッティ図が単なる視覚的表現から強力な意思決定ツールに変わります。
- 実際のプロセス参加者を関与させる。図の作成とレビューには現場の担当者にも加わってもらいましょう。外部の観察者が見落としがちな細かい点も、当事者なら気づけることが珍しくありません。
プロセス マッピングを初めて行う場合は、プロセス マップ テンプレートをスパゲッティ図の土台として利用できます。複数のタイプのワークフローを分析する場合は、スパゲッティ図のほかにフローチャートを使用して、構造化されたステップを実際の移動パターンと比較することを検討してください。
作成した図は、四半期ごとに見直し、更新して、プロセスの変化に合わせて現在のワークフローを反映させる必要があります。
スパゲッティ図の例
スパゲッティ図の効果的な使用例としては、ソフトウェア開発チームによるバグ レポートの処理が挙げられます。このシナリオでは、報告されたバグの発見から解決までをスパゲッティ図で追跡します。
レイアウトには、カスタマー サポート デスク、QA テスト エリア、開発者用ワークステーション、管理オフィスを含めます。バグ レポートの行程を赤い線でたどると、解決に至るまでの間に、課題が複数の部門の間を何度も行ったり来たりしていることがわかります。バグは、サポート チームから開発チームに渡された後、説明のためにサポート チームに戻され、優先順位付けのために管理チームに渡され、また開発チームに戻され、QA チームを経てから、顧客の元へと移動しています。
このように視覚化すると、ハンドオフが必要以上に行われていること、コミュニケーション ギャップが生じていることがひと目でわかります。このインサイトに基づき、サポート チームと開発チームが初期評価の際に直接コラボレーションする効率的なトリアージ プロセスを構築することで、解決までの所要時間を短縮し、部門間の必要以上のハンドオフをなくすことができます。
Confluence ホワイトボードでスパゲッティ図を作成する

Confluence ホワイトボードは、スパゲッティ図を作成し、チームと共有するのに最適なデジタル環境です。まず、Confluence ワークスペースからホワイトボード オプションを選択し、空白のキャンバスを選びましょう。図形ツールを使って、物理環境または仮想環境をマッピングし、ワークステーションやその他の主要な要素を表す長方形を追加します。
さまざまな色のライン ツールを活用して、場所から別の場所への移動経路を追跡します。キャンバスは制限がなく、複雑なプロセスを制約なしで文書化するために十分なスペースがあります。コラボレーション機能により、チーム メンバーは自分が観察した結果をリアルタイムで図に直接追加して役立てることができます。
ホワイトボード戦略は、改善を加えるごとに進化し、その前後のバージョンを作成して進捗を示すことができます。イテレーションを保存して、時間の経過に伴う変化を追跡し、複数の部門全体でインサイトを共有します。Confluence ホワイトボード図はプロジェクト ページに直接埋め込まれ、視覚的な分析に関連ドキュメントを結び付けます。
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